


多くの企業が連携して
成し遂げた“日本初”
2015年8月、『翼』に次ぐ2隻目の環境配慮型タグボート『魁』が就航しました。『魁』は新潟原動機株式会社(現:株式会社IHI原動機)が開発製造したLNG(液化天然ガス)とA重油の双方を燃料として使用できるDual Fuel エンジンを搭載し、京浜ドック株式会社で建造された日本初のLNG燃料タグボートとして、日本郵船株式会社が保有、当社が8年間運航したタグボートです。日本海事協会と京浜ドック株式会社が中心となり、関係法規に対応した運用ができるよう船級規則と設計を確認し、また開発建造にあたっては、経済産業省と国土交通省の補助対象事業として支援を受けたほか、日本海事協会からも共同研究対象事業として支援を受けていました。当時、LNGを燃料とする船舶の建造と運航は、LNG運搬船を除き外航船・ 内航船を通じて日本で初めてのことでした。


液化天然ガスと
A重油を使用できる
「Dual Fuelエンジン」
「魁」の特徴として環境性能が非常に優れている点があげられます。「Dual Fuelエンジン」をLNGモードで運航した場合、従来のA重油使用タグボートに比べ、二酸化炭素排出量を約30%、窒素酸化物排出量を約80%、硫黄酸化物をほぼ100%削減することが可能となります。曳船作業時などエンジンの負荷変動が激しいタグボートには、プロペラ直結LNG燃料エンジンは不向きと考えられてきましたが、関係者の努力により「魁」ではLNG燃料でディーゼルエンジンと同等の性能を実現しました。
LNG燃料の補給(バンカリング)は、陸上のタンクローリーから専用のホースを船体に接続して行う「Truck to Ship」方式を日本で初めて採用しました。この方式の採用には、供給者の東京ガス㈱とともに関係法令への対応や船舶への安全かつ効率的な供給手法の確立に取り組みました。2019年5月には北九州で初めてのLNG燃料バンカリングにも成功しました。アンモニア燃料タグボートへの改造に伴い取り外されたエンジンは教育機関へ寄贈され、海運産業の人材育成に役立てられます。


環境負荷低減啓発への
取り組み
今回のLNG燃料船プロジェクトから得られた知見は多く、バンカリング手順やオペレーションマニュアルなど、大型船へも応用されました。このような実績から、2015年8月の就航から2023年10月の撤退まで、全国から見学や問い合わせが相次ぎ、約1500名の見学者を受け入れました。横浜市が主催する『うみ博』などのイベントにも積極的に参加し未来を担う子ども達に見学してもらう機会を設けるなど、大都市の生活圏に隣接する港湾での環境負荷低減と啓発にも取り組みました。『魁』はLNG燃料船としての検証を重ね、国内でのLNG燃料船の普及に向けたまさに「先駆け」となったのです。
