日本初のLNG燃料タグボート「魁」の登場
2015年8月31日、「翼」に次ぐ2隻目の環境配慮型タグボート「魁」が就航しました。「魁」は日本郵船㈱が保有、当社が用船し運航しています。新潟原動機㈱が開発製造したLNG(液化天然ガス)とA重油の双方を燃料として使用できる「Dual Fuelエンジン」を搭載し、京浜ドック㈱で建造された日本初のLNG燃料タグボートです。
日本海事協会と京浜ドック㈱が中心となって船級規則と設計を確認し、関係法規に対応し運用できるよう関係者で検討を重ねながら建造されました。開発建造にあたり、経済産業省と国土交通省の補助対象事業として支援を受けたほか、日本海事協会からも共同研究対象事業として支援を受けています。 LNGを燃料とする船舶の建造と運航は、LNG運搬船を除き外航船・内航船を通じて日本で初めてのことです。
「魁」の特徴として環境性能が非常に優れている点があげられます。「Dual Fuelエンジン」をLNGモードで運航した場合、従来のA重油使用タグボートに比べ、(二酸化炭素)排出量を約30%、(窒素酸化物)排出量を約80%、(硫黄酸化物)をほぼ100%削減することが可能となります。曳船作業時などエンジンの負荷変動が激しいタグボートには、プロペラ直結LNG燃料エンジンは不向きと考えられてきましたが、関係者の努力により「魁」ではLNG燃料でディーゼルエンジンと同等の性能を実現しました。
LNG燃料の補給(バンカリング)は、陸上のタンクローリーから専用のホースを船体に接続して行う「Truck to Ship」方式を日本で初めて採用しました。この方式の採用には、供給者の東京ガス㈱とともに関係法令への対応や船舶への安全かつ効率的な供給手法の確立に取り組みました。
今回のLNG燃料船プロジェクトから得られた知見は多く、バンカリング手順やオペレーションマニュアルなど、大型船へも応用することが可能です。このような実績から、就航から数年を経ても、全国から見学や問い合わせが相次いでいます。また横浜市が主催する「うみ博」などのイベントにも積極的に参加し未来を担う子ども達に見学してもらう機会を設けるなど、大都市の生活圏に隣接する港湾での環境負荷低減と啓発に取り組んでいます。今後も続けてLNG燃料船としての検証を重ね、国内でのLNG燃料船の普及に向けた「先駆け」として運航を続けていきます。
平成28年 うみ博イベント参加者と共に
LNG船の特徴である黒い排気管。